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イザベラはそう言いながらもハイジラから目を離さない。ハイジラはクービルという名を聞いても特に反応を示さなかった。気絶から目を覚ましても、ほとんど感情の起伏の無い痴呆のような状態に見える。身を守る為の本能がそうさせているかのようである。

「ハンベエさんはイザベラさんなら、この子を何とか出来るかも知れないと言ってましたけど。」

「まあ、ハンベエよりは何とか出来るかも知れないね。ところで、この子、食の方は?」

「ほんの少しだけは食べましたが、全然足りない量ですよ。良く命が保っているものだと。」

「命が保たれる最低限しか入らないわけか。取り敢えず、アタシはハンベエとも話が有るから、この子の事は又後で。大丈夫だとは思うけど、エレナ。油断は禁物だよ。」

「ハンベエさんにも、言われました。」

 エレナがそう言うと、イザベラは肯いて天幕を出た。そのまま、次はハンベエの下に急いだ。

 ハンベエの天幕に行くと、ハンベエはロキともう一人、途方も無く体の大きい僧侶と一緒に居た。「見た事の無い人が一緒だけど、誰だい。」

 とイザベラは尋ねた。

「この坊さんは、ナーザレフの教団の僧侶だ。」

「スラープチンと申します。」

 僧侶はイザベラに会釈した。イザベラは怪訝そうにハンベエの顔を見た。

「ナーザレフの信者達を改心させてくれると言うので、一緒に来てもらっている。」

 ハンベエは無愛想に言った。

 イザベラは肯き、ハンベエに顎をしゃくって天幕の出口を示した。

 ハンベエはうんうんと肯き立ち上がった。二人はロキとスラープーチンを中に残して天幕から出た。が、ロキは二人の話を聞き逃すまいと付いて行った。オイラを除け者にするのは許さないよお、というわけである。

 月はまだ三日月である。今宵の月は青々と冴え、冷ややかな光を湛えている。

「東に西に大忙しだな。」

 とハンベエは冷やかすように無駄口を叩いた。

「クービルがエレナの命を狙ってると聞いて慌てて戻って来たけれど、さすがハンベエ、頼りになるよ。」

「ロキみたいな事を言う。クービルとの殺し合いも結構ヤバかったんだぜ。ほとんど互角、髪の毛一本のところで勝ったようなものだ。今思えば奴には焦りが有った。それが勝負を分けたんだろうな。」

 ハンベエは弁解のように述懐した。

「そうかねえ。アタシもロキの思いが移ったんだろうかね。ハンベエが負ける事は想像出来なくなって来てるよ。そう言えば、もう一人簡単にはくたばりそうにない奴に会ったよ。」

「ボーンと会ったのか。」

「たまたまだけどね。それで、『名無しの権兵衛』さんの最期を伝えた。」

「・・・・・・っ。」

 事も無げにイザベラは言ったが、ハンベエは少し驚いた様子だ。

「黙ってるわけにも行かないだろう。最初は向こうも上役の仇と身構えたけど、詳しく事情を説明したら剣を引いてくれたよ。思ってた通り物分かりの良い奴で良かったよ。」

「まあ、ボーンだからな。」

「それで、ナーザレフの見張りにはボーンが手を貸してくれる事になったんで一旦戻って来たのさ。」

「ほう、さすがにボーンもナーザレフの味方は出来ないようだな。で、イザベラはクービルの狙いが王女だったので心配になったという事か。」

「それも有ったけど、ナーザレフの件でハンベエの手を借りに来たのさ。ナーザレフの側にはまだ三人十二神将が付いている。アタシ一人じゃ手間取りそうだからね。」

「ふむ。」

 とハンベエは腕組みをした。あまり気の乗らない様子だ。「何だよ。煮え切らない感じだねえ。アタシの頼みだったら、二つ返事で引き受けてくれても良さそうなものじゃないか。」

「ああ、他ならぬイザベラの頼みだからなあ。・・・・・・しかし俺ばっかり活躍すると、美味しいところ持ってきやがってと憤懣を抱く奴が居るんだよなあ。」

 イザベラの言うとおり、ハンベエには珍しく煮え切らない態度だ。

「ハンベエを差し置いて、前に出ようとする奴?」

「差し置いてって言うのじゃ無いが、ヒューゴがさ、腕を振るいたくてしょうが無いらしい。まあ、俺も通って来た道だからなあ。それに今俺がこの軍を離れると統率できる人間がなあ。ヘルデンをこっちに残して置くべきだったかなあ。」

 今更ながら将領の不足を感じるハンベエであった。だが、どうであろう。エレナ軍はタゴロローム挙兵以来ずっと三万を切っていない。

 
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